資本費平準化債は、名前のとおり資本費を平準化するための起債です。 ただ、実際に予算に組むときに詰まるのは、考え方ではなくいくらまで出せるのかのほうです。
そして、その計算の入口にある「減価償却費相当額」は、減価償却費ではありません。 定義に括弧書きがあり、そこを読み落とすと発行可能額を多めに見積もることになります。
ここでは、令和8年度の基準と条文の原文で、制度の位置づけ・発行できる額・事業ごとの要件を順に確認します。
結論
資本費平準化債は、供用開始後の施設に係る地方債の元金償還金と、その施設の減価償却費相当額との差額に相当する経費を対象とする公営企業債です。
- 対象になるのは「当該年度の元金償還金の合計 − 減価償却費相当額」の部分です。元金償還金の側には、建設改良費の財源とした企業債の分だけでなく、すでに発行した資本費平準化債の元金償還金も入ります。ただし、超えていれば自動的に出せるという書き方にはなっていません(下の2つ目の丸と「発行できる額」を参照)
- 減価償却費相当額は、法適用企業では「減価償却費 − 長期前受金の償却額」ですが、その長期前受金には括弧書きの除外があります。企業債の元金償還に充てた他会計繰入金に係る分は、差し引く側から外れます
- 要件は「著しく超え」と「経営上の収支に著しい影響が生じている」の2つで、「かつ」で結ばれています
- 下水道事業・簡易水道事業は法適用企業が対象です(2つの例外があります)。水道事業・工業用水道事業は総括原価主義に基づき適正な料金水準を設定している事業が対象です。簡易水道事業は水道事業の中の区分なので、両方が掛かります
- 償還年限は、公営企業債を財源として取得・改良した償却資産の平均残存耐用年数の範囲内(40年を超える場合は40年以内)です
- 準建設改良費に充てる公営企業債を起こす事業は、事業開始後一定期間内に収支相償することが収支計画(投資・財政計画)で確認できることが前提になります
以下、原文で確かめていきます。
どの規定から出てくるのか
起債そのものの根拠は地方財政法第5条です。同条本文は「地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない」としたうえで、ただし書で例外を挙げており、その第1号がこれです。
交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共団体の行う企業(以下「公営企業」という。)に要する経費の財源とする場合
令和8年度地方債同意等基準(令和8年総務省告示第159号)は、この公営企業債の対象経費の柱を、次のように置いています。
建設改良費及び準建設改良費(省令第12条及び附則第6条に規定する建設改良費に準ずる経費をいう。)(以下「建設改良費等」という。)等の公営企業に要する経費の財源とする場合
原文は「建設改良費等」の後に、もう一度「等」を重ねています。建設改良費と準建設改良費の2つだけが対象という書き方ではありません。実際、運用要綱には「建設改良費等以外の経費に充当する公営企業債」という区分も置かれています。
資本費平準化債は、このうち準建設改良費のほうに入ります。中身を定めているのが、地方債に関する省令(平成18年総務省令第54号)第12条です。柱書はこうなっています。
令第十五条第一項第一号イに規定する公営企業の建設又は改良に要する経費(以下「建設改良費」という。)に準ずる経費として総務省令で定める経費は、次に掲げる経費とする。
「令」は地方財政法施行令で、その第15条第1項第1号イに「建設改良費等(公営企業の建設又は改良に要する経費及び当該経費に準ずる経費として総務省令で定める経費をいう。以下この号、次号及び次条第一項第三号において同じ。)」とあり、そこから省令に飛んでいます。
資本費平準化債に当たるのは、この省令第12条の第4号イです。第4号は柱書に条件が付いているので、イだけを読まないでください。
四 次に掲げる経費であって当該経費の財源に充てるために起こした地方債の償還年限が建設改良費の財源に充てるために起こした地方債又は負担金に係る施設の耐用年数の範囲内であるもの イ 供用開始後の施設に係る地方債の元金償還金(公共的団体等が建設した供用開始後の施設に係る負担金(割賦支払の方法によるものに限る。)のうち元金償還金に準ずる経費を含む。ロにおいて同じ。)と当該施設の減価償却費相当額との差額に相当する経費
つまり、償還年限が施設の耐用年数の範囲内であることは、省令の段階ですでに対象経費の要件になっています。あとから運用の話として出てくるのではありません。
なぜこういう起債が認められるのか
同意等基準は、地方債を財源とする事業の一般的同意基準の柱書で、次の点を挙げています。
地方債の発行は、世代間の負担の公平や地方債を発行する地方公共団体の財政運営の健全性、財政秩序の維持、受益者負担の原則等を損なわないものである必要があり
そのうえで、公営企業債の償還年限に関する項に、次のなお書きを置いています。
なお、施設の耐用年数が著しく長期であること等により、資本費の平準化を図るべき合理性を有する場合には、一定の元金償還金について、公営企業債を財源とすることができるものであること。
理由は耐用年数と償還年限のずれです。同意等基準は、公的資金の償還年限が「最長30年(建設改良費等に係る公営企業債(一般会計債のうち、公営企業の施設の整備に係る過疎対策事業を含む。)にあっては最長40年)」であることに照らし、償還年限は原則30年以内(建設改良費等に係る公営企業債は40年以内)が適当としています。 一方、下水道の管渠のように、それより長く使う施設があります。この場合、施設を使い終わる前に借入の返済が終わってしまうので、先の世代が使う分の費用を、いまの世代の使用料で負担することになります。
資本費平準化債は、この差額分の元金償還金を起債でつなぐものです。償還年限が耐用年数の範囲内に収まっている限り、負担はその施設を使う世代の中に留まります。省令第12条第4号の柱書が置かれているのは、そのためです。
発行できる額
運用要綱(第1の1の5(3)イ)の原文はこうです。一文が長いので、そのまま引いたうえで分解します。
供用開始後の施設に係る公営企業債のうち建設改良費の財源としたものの当該年度の元金償還金及び資本費平準化債の当該年度の元金償還金の合計額が減価償却費相当額(法適用企業にあっては、当該施設に係る減価償却費から当該年度における当該施設の取得に係る長期前受金(企業債(償却資産の取得又は改良に充てるために起こした企業債に限る。)の元金の償還に要する資金に充てた一般会計又は他の特別会計からの繰入金を除く。)の償却額を控除して得た額とし、法非適用企業にあっては、法適用企業となった場合の耐用年数等を勘案して算出する額とする。以下同じ。)を著しく超え、かつ、経営上の収支に著しい影響が生じている場合における当該超える額を対象とするものであること。
読む順に並べると、次の4つになります。
| 読み取る内容 | 原文の該当部分 | |
|---|---|---|
| 1 | 比べる左辺は、供用開始後の施設に係る企業債のうち建設改良費の財源としたものの元金償還金と、資本費平準化債の元金償還金の合計 | 「供用開始後の施設に係る公営企業債のうち建設改良費の財源としたものの当該年度の元金償還金及び資本費平準化債の当該年度の元金償還金の合計額」 |
| 2 | 比べる右辺は、減価償却費そのものではなく「減価償却費相当額」 | 「減価償却費から…長期前受金…の償却額を控除して得た額」 |
| 3 | 対象になるのは、左辺が右辺を著しく超え、かつ経営上の収支に著しい影響が生じている場合 | 「著しく超え、かつ、経営上の収支に著しい影響が生じている場合」 |
| 4 | 対象になるのは、その超える額 | 「における当該超える額を対象とするものであること」 |
1で見落とされやすいのが、すでに発行した資本費平準化債の元金償還金も左辺に入ることです。毎年発行していくと、左辺は建設改良費分だけでなく平準化債分も積み上がっていきます。
3は「かつ」です。超えていることと、経営上の収支に著しい影響が生じていることは、別の要件です。しかも「著しく」は、超過の側と収支への影響の側にそれぞれ別に置かれています。基準に数値はありません。超えた分がそのまま発行可能額として確定する書き方にはなっていないので、額は協議又は許可の中で決まります。
減価償却費相当額の括弧書き
2が、この制度でいちばん間違えやすいところです。法適用企業の定義を、括弧を外して書き直すと次のようになります。
減価償却費相当額 = 当該施設に係る減価償却費 − 〔当該年度における当該施設の取得に係る長期前受金の償却額〕
そして、この〔 〕の中の長期前受金には、括弧書きで除外が置かれています。
企業債(償却資産の取得又は改良に充てるために起こした企業債に限る。)の元金の償還に要する資金に充てた一般会計又は他の特別会計からの繰入金を除く。
つまり、企業債の元金償還に充てるために受け入れた他会計繰入金に係る長期前受金は、差し引く対象から外れます。差し引く額が小さくなるので、減価償却費相当額は大きくなり、その結果発行できる額は小さくなります。
括弧書きを落として長期前受金の償却額を全額差し引くと、逆の方向に誤ります。発行可能額を実際より大きく見積もることになるので、予算の組み方に直接響きます。
なお、括弧書きの中には、もう1段の限定が入っています。「償却資産の取得又は改良に充てるために起こした企業債に限る」という部分です。除外されるのは、あくまで償却資産に係る企業債の元金償還に充てた繰入金の分だけです。
設例で確かめる
以下は架空の設例です。実在の団体の数字ではありません。単位は万円で、表示は四捨五入に統一しています。
法適用の下水道事業で、当該年度の数字が次のとおりだったとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 当該施設に係る減価償却費 | 7,000万円 |
| 当該施設の取得に係る長期前受金の償却額(総額) | 1,500万円 |
| うち、償却資産に係る企業債の元金償還に充てた他会計繰入金の分 | 600万円 |
| 供用開始後の施設に係る企業債(建設改良費の財源)の元金償還金 | 8,000万円 |
| すでに発行した資本費平準化債の元金償還金 | 1,200万円 |
順に当てはめます。
- 差し引く長期前受金の償却額 = 1,500万円 − 600万円 = 900万円(括弧書きで600万円が除外される)
- 減価償却費相当額 = 7,000万円 − 900万円 = 6,100万円
- 元金償還金の合計 = 8,000万円 + 1,200万円 = 9,200万円
- 減価償却費相当額を超える額 = 9,200万円 − 6,100万円 = 3,100万円
ここで、括弧書きを落として長期前受金の償却額1,500万円を全額差し引くと、こうなります。
- 減価償却費相当額 = 7,000万円 − 1,500万円 = 5,500万円
- 超える額 = 9,200万円 − 5,500万円 = 3,700万円
差は600万円で、除外されるはずだった繰入金の分とちょうど同じです。括弧書きを落とすと、その額だけ発行可能額を多く見積もります。
法非適用企業の減価償却費相当額
法非適用企業には減価償却費がないので、運用要綱は算出方法を定めています。下水道事業(特定地域生活排水処理施設及び個別排水処理施設を除く)の算式はこうです。
(A÷49+B÷24+C÷25+D÷35+E÷35)×0.9
AからEは、それぞれ管渠・ポンプ場・処理場・流域下水道建設費負担金・その他に係る下水道事業債の発行額に相当する額です。原文は注で「下水道事業債発行額は、一定期間(過去の施設等の耐用年数の期間)に発行した下水道事業債を合算したもの」としています。
これ以外の事業は、次の式によります。
各事業に係る施設の公営企業債発行総額(注1)÷A(注2)×0.9
注2のAは各事業に係る施設の耐用年数ですが、次の事業は表で定められています。
| 事業名 | 施設の耐用年数の期間 |
|---|---|
| 水道事業(簡易水道事業) | 40年 |
| 交通事業(船舶運航事業) | 25年 |
| 下水道事業(特定地域生活排水処理施設及び個別排水処理施設) | 25年 |
下水道事業の算式を、架空の数字で確かめます。管渠60,000万円、ポンプ場4,000万円、処理場12,000万円、流域下水道建設費負担金8,000万円、その他2,000万円とすると、
(60,000÷49 + 4,000÷24 + 12,000÷25 + 8,000÷35 + 2,000÷35)×0.9 = 約1,941万円
となります。管渠の分母が49で最も大きいので、発行額の合計が同じなら、管渠の比重が大きい事業ほど減価償却費相当額は小さく出ます。 発行額の合計を86,000万円に固定したまま管渠の比重だけを動かすと、次のようになります(管渠以外の4区分は同額として置いています。読者が同じ数字を再現できるように、置き方を書いておきます)。
| 管渠の比重 | 減価償却費相当額 |
|---|---|
| 30% | 約2,354万円 |
| 50% | 約2,133万円 |
| 70% | 約1,912万円 |
| 90% | 約1,690万円 |
置き方を変えれば個々の金額は動きますが、向きは変わりません。管渠以外の分母は24・25・35のいずれかで、どれも49より小さいためです。つまり残り4区分をどう割り振っても、管渠の比重を上げれば減価償却費相当額は下がります。 減価償却費相当額が小さいほど、元金償還金との差は大きくなります。
なお、下水道事業と簡易水道事業については、そもそも法適用企業であることが資本費平準化債の要件です(後述)。ただしその要件には例外が2つあり、例外に当たる事業は法非適用のままでも対象になります。したがって、この算式が効いてくるのは次の3つです。
- 法適用に移った直後の経過措置の計算
- 下水道・簡易水道以外の事業
- 下水道事業・簡易水道事業のうち、後述の2つの例外に当たり、法非適用のまま対象になる事業
法適用に移った直後の3年間
法非適用から法適用に移ると、減価償却費相当額の出し方が変わります。算定額が下がると発行できる額も下がるので、運用要綱は経過措置を置いています。
法非適用企業が地方公営企業法を適用した場合の資本費平準化債の発行可能額については、当該企業が地方公営企業法を適用した日の属する年度(当該企業が地方公営企業法を適用した日が4月2日以降の場合は当該年度の翌年度。以下同じ。)及びこれに続く2年度において、当該企業がなお法非適用企業であるとして…算定した額(以下「法非適用時の算定額」という。)が…算定した額(以下「法適用時の算定額」という。)を超える場合においては、次により算定される額とするものであること。 (法適用時の算定額)+(法非適用時の算定額-法適用時の算定額)×A
Aは次のとおりです。
| 区分 | 率 |
|---|---|
| 地方公営企業法を適用した日の属する年度から起算して1年目の年度 | 0.9 |
| 同 2年目の年度 | 0.6 |
| 同 3年目の年度 | 0.3 |
読むときに注意が要るのが、「以下同じ」が付いた括弧書きです。対象年度の定義に「適用した日が4月2日以降の場合は当該年度の翌年度」という読み替えが入っており、「以下同じ」が付いていますので、率の表の「適用した日の属する年度から起算して」も、この読み替え後の年度を指します。4月1日に適用したのか、年度の途中で適用したのかで、起算点が1年ずれます。
前の設例で、法適用時の算定額が3,100万円、法非適用時の算定額が4,000万円だったとします(説明のため、どちらも毎年同額として単純化しています)。差は900万円なので、
| 年度 | A | 発行可能額 |
|---|---|---|
| 1年目 | 0.9 | 3,910万円 |
| 2年目 | 0.6 | 3,640万円 |
| 3年目 | 0.3 | 3,370万円 |
| 4年目以降 | — | 3,100万円 |
となります。3年かけて法適用時の算定額に寄せていく組み立てです。逆に言えば、法非適用時の算定額のほうが小さい事業には、この経過措置は働きません。条文が「法非適用時の算定額が法適用時の算定額を超える場合においては」と書いているためです。
償還年限
運用要綱は次のとおりです。
償還年限については、原則として全ての償却資産のうち公営企業債を財源として取得又は改良した償却資産の平均残存耐用年数の範囲内(ただし、平均残存耐用年数が40年を超える場合には40年以内)とすること。
3つ読み取ります。
- 基準になるのは残存耐用年数です。耐用年数ではありません
- 対象は「公営企業債を財源として取得又は改良した償却資産」に限られます。全資産の平均ではありません
- 平均残存耐用年数が40年を超えても、40年が上限です
平均残存耐用年数の具体的な算定方法は、運用要綱には書かれていません。取得価額で加重するのか、帳簿価額で加重するのかで結果は変わりますので、協議の前に都道府県の市町村担当課に確かめてください。ここを自分の解釈で決めてしまうと、後から積算をやり直すことになります。
事業ごとの追加要件
同じ資本費平準化債でも、事業によって条件が加わります。令和8年度の運用要綱では次のようになっています。
| 事業 | 資本費平準化債を発行するために加わる要件 |
|---|---|
| 下水道事業・簡易水道事業 | 「法適用企業を対象とするものであること」。例外は、①既に統合・廃止が決定しており、将来にわたり継続を見込まない事業で、その旨を公表している事業、②災害対応その他の理由により、公営企業会計の適用が著しく困難な事業 |
| 水道事業(上水道事業分・簡易水道事業分) | 「総括原価主義に基づき適正な料金水準を設定している事業を対象とするものであること」 |
| 工業用水道事業 | 同上。ただし補助事業は「料金算定要領に基づき料金算定している事業」 |
簡易水道事業は、2つの行の両方に出てきます。 運用要綱は水道事業の項の冒頭で「水道事業については、水道法上の事業認可に基づき、上水道事業分と簡易水道事業分を明確に区分するものであること」としており、簡易水道事業分は水道事業の中の区分です。総括原価主義の定めは、その水道事業の項に何の限定もなく置かれています。したがって簡易水道事業は、法適用企業であることと、総括原価主義に基づく適正な料金水準であることの両方が掛かる読みになります。下水道事業と同じ扱いとして整理しないでください。
港湾整備事業については、事業ごとの項ではなく、発行できる額を定めた運用要綱 第1の1の5(3)イ の末尾に、次のなお書きが置かれています。減価償却費相当額を出すときの定めですので、資本費平準化債そのものの規定です。
なお、港湾整備事業に係る埠頭用地の耐用年数については、岸壁と同じ年数(50年)を用いることとすること。
このほかに、資本費平準化債そのものの要件ではありませんが、関連して次の定めがあります。
- 交通事業(地下鉄) … 供用開始後の未利用施設等に係る利子を対象とする別の起債の要件の1つとして、「資本費平準化債を充当してもなお資金不足額があること」が挙げられています。資本費平準化債を先に使うことが前提になっている、という位置づけです
下水道事業・簡易水道事業の法適用要件については、下水道事業の法適化で、高資本費対策の繰出基準との時期の違いを含めて整理しています。
水道事業・工業用水道事業の総括原価主義に基づく適正な料金水準は、実務上は重い条件です。料金改定を先送りしている事業は、ここで引っかかります。料金の検討の進め方は水道料金・下水道使用料の改定にまとめています。
収支計画で収支相償が確認できること
もう1つ、事業の種類を問わず掛かる条件があります。運用要綱は、次の事業について「事業開始後一定期間内において収支相償する事業であることが収支計画(投資・財政計画)において確認できるものを対象とするものであること」としており、その第3号に準建設改良費が挙がっています。
⑶ 準建設改良費に充当する公営企業債を起こすこととしている事業
資本費平準化債を起こす以上、収支計画(投資・財政計画)で収支相償が確認できる状態にしておく必要があります。経営戦略の投資・財政計画がそのまま問われる場面ですので、投資・財政計画の作り方と経営戦略は作った後が本番も合わせて確認してください。
「元金償還金を先送りするだけ」ではないのか
議会や内部の説明で必ず出る論点なので、正面から書きます。
その年度の元金償還金の一部を新たな起債で賄うのですから、企業債残高はその分だけ減りません。これは事実です。資本費平準化債を発行した年度の資金繰りは楽になりますが、残高が消えるわけではなく、償還は後ろに回ります。
制度がそれを認めているのは、後ろに回す先が、その施設を使い終わるまでの期間の中に収まっているからです。省令第12条第4号の柱書が償還年限を施設の耐用年数の範囲内に限り、運用要綱がさらに平均残存耐用年数の範囲内(40年上限)に絞っているのは、そのためです。同意等基準の言う「世代間の負担の公平」は、この範囲に収まっていることを指しています。
したがって、説明の組み立ては次のようになります。
- 使うのが妥当な場面 … 耐用年数の長い施設を、それより短い償還年限の企業債で建設したために、いまの世代の使用料負担が重くなっている
- 使っても解決しない場面 … 収支が恒常的に足りていない。この場合、資本費平準化債は収支不足の穴埋めではありません。運用要綱が収支計画で収支相償を確認させているのも、そこを区別するためです
資本費平準化債は、料金改定の代わりにはなりません。減価償却費相当額を超えている部分にしか使えず、しかも償還年限は耐用年数の中に収まっている必要があります。使用料が原価を下回っていることが原因であれば、対処は別のところにあります。
まとめ
- 資本費平準化債は、準建設改良費(地方債に関する省令第12条第4号イ)に当たる公営企業債です。対象は「供用開始後の施設に係る地方債の元金償還金と当該施設の減価償却費相当額との差額に相当する経費」です
- 対象になるのは「元金償還金の合計 − 減価償却費相当額」の部分です。元金償還金の側には、すでに発行した資本費平準化債の元金償還金も入ります。超えていれば自動的に出せるという書き方ではなく、額は協議又は許可の中で決まります
- 減価償却費相当額は減価償却費ではありません。差し引く長期前受金の償却額には括弧書きの除外があり、企業債の元金償還に充てた他会計繰入金に係る分は差し引きません。落とすと発行可能額を多く見積もります
- 要件は「著しく超え」と「経営上の収支に著しい影響」の2つが「かつ」で結ばれています。数値基準はなく、額は協議又は許可の中で決まります
- 法非適用企業の減価償却費相当額は算式で出します。下水道事業は管渠の分母が49で最も大きいので、発行額の合計が同じなら、管渠の比重が大きい事業ほど小さく出ます
- 法適用に移った直後は、1年目0.9・2年目0.6・3年目0.3の経過措置があります。対象年度の定義に「4月2日以降の適用なら翌年度」という読み替えがあり、率の表にも効きます
- 償還年限は平均残存耐用年数の範囲内(40年超の場合は40年以内)。算定方法は運用要綱に書かれていないので、協議の前に確かめてください
- 下水道事業・簡易水道事業は法適用企業(例外が2つあります)、水道事業・工業用水道事業は総括原価主義に基づく適正な料金水準が追加の要件です。簡易水道事業は水道事業の中の区分でもあるので、両方が掛かります
- 準建設改良費に充てる公営企業債を起こす事業は、収支計画(投資・財政計画)で収支相償が確認できることが前提です
なお、ここで扱ったのは令和8年度の基準です。同意等基準・運用要綱は毎年度告示・通知されますので、予算に組む年度の版で確かめてください。