中小企業向け税務

電子帳簿保存法 — 義務なのは3つのうち1つだけです

「電子帳簿保存法の対応は済んでいます」とうかがって、中身を聞くと、会計ソフトを入れ替えた話だった、ということがあります。

会計ソフトは義務ではないほうの制度に関わるものです。義務のほうは、外から届くデータをどう保存しているかの話で、こちらは手つかずということが起こります。

逆もあります。「猶予措置があるからまだ何もしなくていい」と聞いた、という話です。猶予措置が外すのは要件であって、データを保存すること自体は外しません。

整理します。

結論

  • 電子帳簿保存法には3つの制度がありますが、対応が必要なのは「電子取引データ保存」だけです。残る2つは希望者のみの制度です
  • 要件は3つ(改ざん防止・ディスプレイ等の備付け・検索機能)。このうち検索機能は、税務調査でダウンロードの求めに応じられるようにしたうえで、基準期間の売上高が5,000万円以下であれば丸ごと不要になります
  • 改ざん防止は、国税庁が公開しているサンプルを使った事務処理規程で足ります。ソフトの購入は要りません
  • 猶予措置は「要件」を外すだけです。 データを残さず出力書面だけを保存する運用は、猶予措置の下でも認められません
  • 令和9年に、優遇措置が3つ出そろいます。 過少申告加算税の5%軽減は既にある制度、重加算税の10%加重の適用除外は令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から、青色申告特別控除75万円は令和9年分以後の所得税です。いずれもあらかじめ届出書を出しておく必要があります
  • 青色申告特別控除は、令和9年分から段そのものが組み替わります。 55万円の段は電子申告が要件に加わって65万円になり、いまの65万円の段が75万円になります

3つの制度のうち、義務なのは1つだけです

国税庁は制度を3つに分けています。

制度何の話か対応
電子帳簿等保存自分がパソコンで作った帳簿や書類を、紙に印刷せずデータのまま保存する希望者のみ
スキャナ保存紙で受け取った請求書・領収書をスキャンしてデータで保存する希望者のみ
電子取引データ保存データで受け取った、またはデータで渡した取引情報を保存する法人・個人事業者は対応が必要

この区分は国税庁のパンフレットの表記そのままです。

①電子帳簿等保存【希望者のみ】②スキャナ保存【希望者のみ】③電子取引データ保存【法人・個人事業者は対応が必要】の3つの制度に区分されています

条文を見ると、違いははっきりしています。前の2つは電子帳簿保存法4条に置かれていて、いずれも「代えることができる」と書かれています。

保存義務者は、国税関係帳簿(財務省令で定めるものを除く。…)の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる(電子帳簿保存法4条1項=電子帳簿等保存)

前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。…)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる(電子帳簿保存法4条3項=スキャナ保存)

3つ目だけが「しなければならない」です。

所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない(電子帳簿保存法7条)

帳簿を紙で保存し続けるのは、いまも自由です。 要件を満たせない帳簿は、各税法に基づいて書面で保存すればよいだけです。スキャナ保存も同じで、紙で受け取った請求書を紙のまま綴じておく運用に問題はありません。

手をつける順番を決めるなら、義務である3つ目が先です。

「電子取引」は、請求書のメール添付だけではありません

ここが最も見落とされます。国税庁の一問一答は、次の7つをいずれも電子取引に該当するとしています(問5)。

受け取り方
⑴電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
⑵インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ、またはホームページ上に表示される請求書や領収書等のスクリーンショットを利用
⑶電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
⑷クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
⑸特定の取引に係るEDIシステムを利用
⑹ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
⑺請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領

ネットバンキングも入ります。

インターネットバンキングを利用した支払等は、その取引情報の正本が別途郵送されるなどといった事情がない限り、EDI取引として電子取引に該当します(問10)

保存すべきなのは「金融機関の窓口で振込等を行ったとした場合に受領する書面の記載事項(振込等を実施した取引年月日・金額・振込先名等)が記載されたデータ」です。なお、金融機関のオンライン上の通帳や入出金明細等による保存も可能とされています(問11)。

クレジットカードの利用明細には注意が要ります。

クレジットカードの利用明細データ自体も電子取引の取引情報に該当することから、その電磁的記録の保存が必要です。また、その利用明細データに含まれている個々の取引についても、請求書・領収書等データ(取引情報)を電磁的に授受している場合には、クレジットカードの利用明細データ等とは別途、その保存が必要となります(問5 へ)

明細を保存しているから個別の領収書は要らない、とはなりません。

逆に、保存しなくてよいもの

見落としと同じくらい、拾いすぎも起こります。

対象扱い根拠
取引情報が含まれていない電子メール保存する必要はない。添付ファイルで授受された場合は添付ファイルのみでよい問6
e-Taxのダイレクト納付等の受信通知(納付区分番号通知、納付完了通知)取引情報に当たらないため保存義務はない問9
振込依頼を受け付けた旨のみが画面に表示される場合取引情報に該当しないため保存の必要はない問10
同じ内容を書面でも受領し、書面を正本として取り扱うことを社内で取り決めている場合書面の保存のみで足りる問16

最後の1つには続きがあります。「書面で受領した取引情報を補完するような取引情報が電子データに含まれているなどその内容が同一でない場合には、書面及び電子データの両方を保存する必要があります」(問16)。同一であることが前提です。

満たすべき要件は3つです

保存する場所と期間は、紙の場合と同じです。施行規則は「当該書面を保存すべきこととなる場所に、当該書面を保存すべきこととなる期間」と定めています(施行規則4条1項)。

区分電子取引データの保存期間
法人7年(青色欠損金または災害損失金が生じた事業年度は10年)
個人事業者(青色申告者)の請求書・見積書・契約書・納品書・送り状など5年
個人事業者(青色申告者)の領収証・小切手控・預金通帳など(現金預金取引等関係書類)7年(前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の方は5年)

消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等と、インボイス発行事業者が交付した適格請求書の写しや提供した電磁的記録は、上記にかかわらず7年です。

そのうえで、次の3つを満たします。

ただし、自社で開発したプログラムを使っている場合だけ、4つ目として「システム概要書の備付け」が加わります。 施行規則4条1項は、2条2項2号(ディスプレイ等)と2条6項5号(検索機能)のほかに「同項第六号において準用する同条第二項第一号(同号イに係る部分に限る。)」を挙げており、そのイが電子計算機処理システムの概要を記載した書類だからです。市販のソフトを使っているなら、2条2項1号の括弧書きでこの書類は除かれます。国税庁も要件を4つとして示しています。

なお、電子取引を行った場合には、検索要件のほか、①システム概要書の備付け(自社開発システムの場合)、②見読可能装置の備付け及び③改ざん防止措置(規則第4条第1項各号のいずれかの要件)を満たす必要があります(問54)

1. 改ざん防止の措置

施行規則4条1項は4つの措置を並べ、そのいずれかを行えばよいとしています。

措置
一当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと
二当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すこと。イ 授受後、速やかに行う/ロ 業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行う(ロは、授受からタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る)
三訂正削除の事実と内容を確認できる、または訂正削除ができない電子計算機処理システムを使用して、授受と保存を行うこと
四正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、その規程に沿った運用を行い、規程の備付けを行うこと

現実的な答えは四です。 取扱通達7-7は、自らの規程だけで防止する場合に含むべき内容として、次を挙げています。

  • データの訂正削除を原則禁止
  • 業務処理上の都合によりデータを訂正または削除する場合の事務処理手続(訂正削除日、訂正削除理由、訂正削除内容、処理担当者の氏名の記録及び保存)
  • データ管理責任者及び処理責任者の明確化

国税庁が規程のサンプルを公開しています。 ここに費用をかける必要はありません。

2. ディスプレイ・プリンタ等の備付け

画面と書面に「整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができる」ようにしておくことが要件です(施行規則2条2項2号)。

ハードルは低く設定されています。

ディスプレイやプリンタ等の性能や設置台数等は、要件とされていません(問20)

スマートフォンだけで取引している場合についても、「税務調査等があった時点においてプリンタを常設していない場合であっても、近隣の有料プリンタ等により税務職員の求めに応じて速やかに出力するなどの対応ができれば、プリンタを備え付けているものと取り扱って、差し支えありません」とされています(問21)。

3. 検索機能の確保

原則は3つです(施行規則2条6項5号)。

  • 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索の条件として設定できること
  • 日付または金額については、範囲を指定して条件を設定できること
  • 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること

ただし、この3つは2段階で外れます。 施行規則4条1項の括弧書きがその構造を作っています。

状態確保すべき検索機能
何もしていない3項目・範囲指定・組合せ のすべて
ダウンロードの求めに応じられるようにしている3項目のみ(範囲指定と組合せは不要)
ダウンロードの求めに応じられるようにしており、かつ、基準期間の売上高が5,000万円以下、または出力書面を日付・取引先ごとに整理して提示できるようにしている不要

3段目の「かつ」と「または」を取り違えないでください。ダウンロードの求めに応じられることは、どの段でも必ず要ります。 そのうえで、売上高の要件か書面整理の要件のどちらかを満たすと、検索機能が丸ごと不要になります。

なお「ダウンロードの求めに応じる」とは、求めの一部にだけ応じることではありません。取扱通達7-9は「当該職員の求めの全てに応じた場合をいうのであって、その求めに一部でも応じない場合はこれらの規定の適用(電子帳簿等保存制度の適用・検索機能の確保の要件の緩和)は受けられないことに留意する」としています。

この「売上高」は、消費税の課税売上高のことではありません

ここは実際に取り違えが起きます。国税庁は明記しています。

規則第4条第1項は「売上高」と規定していることから営業外収入や雑収入を含んでおらず、結果として、消費税法上の「課税売上高」とはその内容を異にしていますので、ご注意ください(問51)

具体的には次のようになります。

論点扱い
判定する期間個人は前々年(1月1日から12月31日まで)、法人は前々事業年度
判定の方法消費税法37条の基準期間における課税売上高の判断基準の例による
消費税額税抜きで判断する
基準期間が1年でない法人月数で除して12を乗じ、年換算して判断する
非課税売上額消費税の課税売上高と違い、含まれる
営業外収益・特別利益含まれない(一時的に保有する資産の売却額など)
基準期間がない新規開業者・新設法人初年(度)・翌年(度)は検索機能の確保が不要

免税事業者や簡易課税を選んでいる方ほど注意が要ります。 国税庁は「消費税の免税事業者や簡易課税制度を適用している者であっても、非課税売上額を含めると5,000万円を超える場合は…該当しません」としています。

書面を整理しておく道もあります

売上高で外れない場合でも、出力書面の整理で検索機能を不要にできます。整理の方法は取扱通達7-3が3つ挙げています。

  • 課税期間ごとに、取引年月日その他の日付の順にまとめた上で、取引先ごとに整理する方法
  • 課税期間ごとに、取引先ごとにまとめた上で、取引年月日その他の日付の順に整理する方法
  • 書類の種類ごとに、上の2つと同様の方法により整理する方法

「調査のときに印刷すればよい」ではありません。 国税庁は「遅滞なく提示等ができるように書面出力して整理しておくといった準備を事前にしていなかった場合には、検索機能の確保の要件が不要となるための条件を満たしていないと判断される可能性がある」としています(問52)。日頃から出力して整理しておく運用が前提です。

紙の整理を続けるより、検索できる形でデータを置くほうが軽いことが多いはずです。 索引簿をExcelで作る方法と、ファイル名を「20210131_㈱霞商店_110000」のように統一した順序にする方法が一問一答に示されています(問50)。

猶予措置は「保存しなくてよい」という意味ではありません

ここが最も誤解されています。条文を読みます。

法第七条に規定する保存義務者が、電子取引を行った場合において、災害その他やむを得ない事情により…保存をすることができなかったことを証明したとき、又は納税地等の所轄税務署長が…保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録及び当該電磁的記録を出力することにより作成した書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしているときは、第一項の規定にかかわらず、当該電磁的記録の保存をすることができる(施行規則4条3項)

外れているのは「第1項」、つまり要件のほうです。 保存すること自体は残ります。取扱通達がそこを念押ししています。

その出力書面の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合であっても、その出力書面の保存のみをもってその電磁的記録の保存を行っているものとは取り扱われないことに留意する(取扱通達7-13)

条文が「及び」と書いていることにも注意してください。猶予措置の下では、データと出力書面の両方を求めに応じて出せる必要があります。データを消してしまえば、猶予措置の要件のほうを満たせません。

「相当の理由」は広く認められています

取扱通達7-12は「事業者の実情に応じて判断するものであるが、例えば、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等がこれに該当する」としています。国税庁のチェックシートは、もう少し具体的です。

相当の理由とは、例えば、「システム等の整備が間に合わない」「人手不足」「システム整備の資金不足」など、原則的なルールに従って電子取引データの保存を行うための環境が整っていない事情がある場合が該当します

事前の申請も要りません。「この猶予措置の適用を受けるに当たり税務署への事前申請等の手続は必要ありません」(問93)。

ただし、使えない場合があります

広いのは「理由」の話であって、誰でも使えるという意味ではありません。

場面猶予措置の適用根拠
システムやワークフローの整備が間に合わないある通達7-12
整備が整っており要件に従って保存できるのに、資金繰りや人手不足等の理由がなく、要件に従って保存していないない問93
これまで要件どおり保存できていたが、システム更改で検索要件を満たせなくなった(特段の事情なし)ない問95
検索を書面整理で代えていたが、保管場所の都合で書面を廃棄した(特段の事情なし)ない問96
要件に従って保存を行わないことを明らかにしているない(施行規則4条3項ただし書)問93

ただし、既に原則どおり対応している事業者であっても、「事業規模の大幅な変更などの事業実態の変化があり、資金繰りや人手不足等の理由があって要件に従って保存することができなかった場合」は対象になるとされています(問95)。

最後の行(書面の廃棄)には、読み落とすと損をする続きがあります。猶予措置には乗れませんが、書面を捨てること自体が禁じられているわけではありません。

ただし、書類の保存スペースの関係から電磁的記録を出力した書面を破棄する場合について、事後的に以下の要件を満たす検索機能を確保(【問48】参照)したうえで、電磁的記録を出力した書面の廃棄と引き換えに電子データのみを保存していた場合は、検索機能の要件を確保していることになります(問96)

引用中の「以下の要件」は、この記事の「3. 検索機能の確保」に挙げた原則の3つ(3項目・範囲指定・組合せ)です。

つまり、先に検索できる形を整えてから紙を捨てれば、原則の要件を満たした状態に移れます。順序が逆だと満たせません。

猶予措置は、整うまでの間の措置です。 国税庁は「事情が解消された後に行う電子取引については、保存時に満たすべき要件に従った電子データの保存ができるよう準備していただく必要があります」としています(問94)。

満たせていないと、何が起きるのか

一問一答は、青色申告の承認の取消しに触れています。

災害その他やむを得ない事情又は税務署長が相当の理由があると認める事由がなく、その電磁的記録が保存時に満たすべき要件に従って保存されていない場合は、青色申告の承認の取消対象となり得ます(問98)

同時に、直ちに取り消されるものではないとも書かれています。

なお、青色申告の承認の取消しについては、違反の程度等を総合勘案の上、真に青色申告書を提出するにふさわしくないと認められるかどうかを検討した上、その適用を判断しています(問98)

経費が否認されるかどうかについても、同様の説明があります。「その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにもかかわらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません」(問98 注)。

脅かす話ではありません。 ただ、要件に従わずに保存した電磁的記録や出力書面は「国税関係書類以外の書類とみなされません」とされており、帳簿書類として扱われないという効果は残ります。

消費税は、この条文の外にあります

電子帳簿保存法7条が対象にしているのは「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者」です。消費税は入っていません。

消費税に係る保存義務者が行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存については、その保存の有無が税額計算に影響を及ぼすことなどを勘案して、引き続き、その電磁的記録を出力した書面による保存が可能とされています(問98)

仕入税額控除についても同じです。

電子取引の取引情報に係る電磁的記録を出力した書面等については、保存書類(国税関係書類以外の書類)として取り扱わないこととされましたが、消費税法上、電子インボイスを整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面を保存する場合には、仕入税額控除の適用を受けることができます(問5 ト)

「データを保存できていないと消費税の控除も飛ぶ」という説明は正確ではありません。 ただし逆も言えます。消費税の側で書面保存が認められることは、法人税・所得税の側の保存義務を免除するものではありません。

令和9年に、優遇措置が3つ出そろいます

ここからは義務ではなく、取りに行く話です。

優遇措置内容要件いつから
過少申告加算税の5%軽減原則10%が5%に優良な電子帳簿既にある制度
重加算税の10%加重の適用除外電子データに係る隠蔽・仮装のときの10%加重を外すデジタルシームレス保存令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税
青色申告特別控除75万円(個人事業者)65万円から75万円へ優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存+電子申告令和9年分以後の所得税

2段目は「令和9年1月1日以後の取引」ではなく「令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税」が基準です。12月決算の法人なら、令和8年12月期から射程に入ります(法人税の確定申告書の提出期限は、原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内です)。

「デジタルシームレス保存」は国税庁が使っている呼び方で、「請求書等の電子取引データを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組み」を指します。令和7年度税制改正で新設されました。

3段目の青色申告特別控除は、令和8年度税制改正で3つの段そのものが組み替わります。 75万円だけの話ではありません。これは大綱の段階ではなく、すでに成立した改正です(所得税法等の一部を改正する法律・令和8年法律第12号。令和8年3月31日公布、令和9年1月1日施行)。

大綱は、55万円の控除に電子申告を要件として加えたうえで65万円に引き上げ、いまの65万円の控除を75万円に引き上げるとしていました。

① 55 万円の青色申告特別控除について、その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うことを適用要件に加えた上、控除額を65 万円に引き上げる。/② 65 万円の青色申告特別控除について、対象者を上記①の見直し後の要件を満たす者であって、その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳につき、…電磁的記録の保存等を行っていること(次に掲げる場合のいずれかに該当する場合に限る。)との要件を満たすものとした上、控除額を75 万円に引き上げる。(令和8年度税制改正の大綱 一 4(3))

成立した条文も同じ形になっています。条番号も一緒に動くので、並べておきます。

段いまの条文改正後(令和9年分以後)
正規の簿記で足りる段55万円(措置法25条の2第3項)65万円(同条4項)。電子申告が必須(同条7項)
電子帳簿まで求める段65万円(同条4項。優良な電子帳簿または電子申告)75万円(同条5項。優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存。4項を読み替える形なので、電子申告も要ります)

75万円のほうは、65万円を読み替える形で書かれています。

前項に規定する個人が同項に規定する場合に該当する場合において、その年における同項に規定する帳簿書類のうち財務省令で定めるものについて、財務省令で定めるところにより、…電磁的記録の備付け及び保存…を行つているとき(次に掲げる場合のいずれかに該当する場合に限る。)は、前項第一号中「六十五万円」とあるのは、「七十五万円」として、同項の規定を適用することができる(改正後の租税特別措置法25条の2第5項)

そして、65万円の段そのものに電子申告が掛かります。

第四項の規定は、その年分の所得税の確定申告書の提出期限までに、…電子情報処理組織を使用して、…情報を送信した場合に限り、適用する(改正後の租税特別措置法25条の2第7項)

紙で申告している方は、段が上がるのではなく下がります。 電子申告をしていなければ、いまの55万円の段に居続けることはできません。

大綱の同じ項の③では、10万円の控除の対象者からも、簡易な簿記で記録している者のうち前々年分の不動産所得・事業所得の収入金額が1,000万円を超えるものが除かれます(改正後の同条2項。条文は「総収入金額」です)。いずれも令和9年分以後の所得税についての話です。

「優良な電子帳簿」のほうは帳簿の話です

名前が似ていて混ざりますが、こちらは外から届くデータではなく、自分が作る帳簿の制度です。対象は仕訳帳・総勘定元帳・その他必要な帳簿(売上帳、仕入帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿、固定資産台帳、繰延資産台帳、賃金台帳(所得税のみ)、有価証券受払い簿(法人税のみ))と、消費税法上の帳簿です。

要件は3つで、電子帳簿等保存の要件に上乗せされます。

  • 訂正削除履歴の保存等(訂正・削除の事実と内容、通常の期間経過後の入力の事実を確認できること)
  • 帳簿間の相互関連性の確保
  • 検索機能の確保(①日付・金額・相手方 ②範囲指定 ③2以上の組合せ。ダウンロードの求めに応じる場合は②③が不要)

いくらの話か

架空の例示で計算します。 期限内申告で納付した法人税が200万円、その後の調査で修正申告し、追加で納付する法人税が300万円だったとします。金額は端数が出ない設定にしてあります。

過少申告加算税は、国税通則法65条1項で追加税額の10%、同条2項で「期限内申告税額と50万円とのいずれか多い金額」を超える部分にさらに5%です。65条1項には括弧書きがあり、調査があったことにより更正があるべきことを予知してされたものでない修正申告なら5%になります。 ここでは調査を受けての修正申告としているので、10%で計算します。

優良な電子帳簿でない優良な電子帳簿
65条1項(300万円×10%)30万円30万円
65条2項(超える部分100万円×5%)5万円5万円
電子帳簿保存法8条4項の控除(300万円×5%)—△15万円
確定額35万円20万円

国税庁のパンフレットは「過少申告加算税の割合が原則10%から5%に軽減されます」と説明していますが、条文は率を半分にするのではなく、計算した金額から「基礎となるべき税額」の5%を控除する形をとっています(電子帳簿保存法8条4項)。65条2項の加算がある設例で、35万円がちょうど半分の17万5千円ではなく20万円になるのはそのためです。

重加算税のほうは桁が変わります。隠蔽・仮装があった場合、国税通則法68条1項で35%、その事実が電磁的記録に記録されていれば電子帳簿保存法8条5項でさらに10%です。

加重措置の対象除外措置の適用あり
68条1項(300万円×35%)105万円105万円
電子帳簿保存法8条5項(300万円×10%)30万円—
確定額135万円105万円

重加算税は隠蔽・仮装があったときの話ですから、まっとうに経理していれば関係がありません。 それでも除外措置に意味があるのは、人手による入力を挟まない仕組みにすれば、そもそも間違いが減るという点にあります。国税庁もそちらを前面に出しています。

事業者の方が日頃行う事務処理について、①請求や決済のやり取りが電子で行われ、②当該データが変更等されず保存されるとともに、③仕訳もデータ連携により記録され、④そのデータが税務申告・納税まで連携されるような場合、人手による入力作業が介さないため、事業者の事務負担の軽減や正確性の向上が期待されます(問65)

届出を忘れると、要件を満たしていても受けられません

3つとも「あらかじめ」届出書を出す必要があります。「あらかじめ」の意味は取扱通達が定めています。

規則第5条第1項及び第6項に規定する届出書は、法第8条第4項((過少申告加算税の軽減措置))の規定の適用を受けようとする国税又は同条第5項((重加算税の加重措置))の規定の適用が除外される国税の法定申告期限までに所轄税務署長等に提出されていれば、「あらかじめ」提出されているものとして取り扱うこととする(取扱通達8-5)

国税庁のパンフレットは具体例を挙げています。

例えば、個人事業者の方が令和8年分から優良な電子帳簿(過少申告加算税の軽減)やデジタルシームレス保存(重加算税の加重措置適用除外)の優遇措置を受けたい場合は、令和9年3月15日までに届出書を提出する必要があります

既に届出を出している方への手当てもあります。

優良な電子帳簿で青色申告特別控除65万円の適用を受けている場合は、改めて届出書を提出しなくても青色申告特別控除75万円の適用が受けられますよ

青色申告特別控除75万円だけは、届出書のほかにもう1つ要ります。 パンフレットは「※青色申告特別控除75万円の適用を受ける場合は所得税の青色申告承認申請手続も必要です」としています。加えて「事業所得又は不動産所得を生ずべき事業の帳簿書類を備付け、日々の取引を「正規の簿記の原則」に従って記録し、作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して、提出期限までに提出すること」が前提とされています。

なお、届出書の効力は引き継がれないことがあります。組織変更(有限会社から株式会社など)では引き継がれますが(問81)、個人事業者が法人成りした場合は引き継がれず、改めて提出が必要です(問82)。合併や営業譲渡でも引き継がれません(取扱通達8-6)。

「課税期間の初日から」と「取引ごと」の違いが効きます

2つの措置は、要件を満たすべき期間の考え方が違います。ここを取り違えると、間に合うはずのものを逃します。

過少申告加算税の5%軽減重加算税の加重措置の除外
判断の単位課税期間取引(電磁的記録)ごと
いつから要件を満たす必要があるか課税期間の初日から該当する電磁的記録を保存した以降
期中に始めた場合その課税期間は適用なし導入後に保存したデータは対象
根拠取扱通達8-1取扱通達8-24、問75

取扱通達8-1は「課税期間を通じて…定める要件を満たして特例国税関係帳簿の保存等を行っていなければ、当該課税期間について…規定の適用はないことに留意する」としています。優良な電子帳簿は、期の途中から始めてもその期には効きません。

一方、除外措置は「課税期間の開始の日から…要件を満たす状態である必要はなく、該当する電磁的記録を保存した以降の保存期間を通じて…要件を満たして保存等を行うことで除外措置が適用され」るとされています(取扱通達8-24)。

デジタルシームレス保存は、いまのところ入口が2つです

国税庁長官が定める基準は告示で決まっており(令和7年3月31日 国税庁告示第2号)、次のいずれかを要件どおり保存できる機能を持つシステムであることとされています。

  • デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス(Peppol BIS Standard Invoice JP PINT または JP BIS Self-Billing Invoice)
  • 預金者・貯金者の委託を受けて金融機関等が行う為替取引(いわゆる銀行決済)の取引情報

これは「システムが満たすべき機能」の話です。 そのシステムを使っていれば、実際に保存するデータはこの2種類に限られません。一問一答は「Peppolインボイス以外の電子取引データで、特定電子計算機処理システムを使用し、規則第4条の原則的な電子取引データ保存及び規則第5条第5項各号の要件を満たして保存が行われているものについては、重加算税の加重措置の除外措置の適用を受けることができます」としています(問74)。

満たせない形も明示されています。

形可否根拠
JP PINTに従って作成されたXML形式のデータをメールに添付して提供したもの該当しない問77
テキスト埋込形式のPDF・画像形式のPDFなり得ない(OCR等で読み取ると取引内容の変更可能性がある)問66
データ添付形式のPDF満たすことも可能問66
API連携・ファイル連携・スクレイピング・RPA等による自動取得該当する問67
取得後に担当者が手動で登録する場合該当しない問67
一方のソフトから手作業でCSVを出して他方に取り込む要件を満たさない問69

分かれ目は「手が入るかどうか」です。 自動で連携していれば別々のシステムでも構いません(問69、問73)。

満たすべきものは、システムのほかに4つあります

基準に適合するシステムを使うだけでは足りません。そのシステムで送受信・保存したうえで、次の4つを満たす必要があります。①から③は国税庁のパンフレットの表記です。

要件中身
①改ざん防止の確保データの送受信と保存を、訂正削除履歴が残るシステム又は訂正削除ができないシステムで行う
②記帳の適正性確保電子取引データの金額の訂正削除を行った上で電子帳簿に記録することができないこと(又は訂正削除の事実を確認できるようにしておくこと)
③電子帳簿との相互関連性確保電子取引データと電子帳簿との関連性を相互に確認することができるようにしておくこと
④そのシステムを使ったことの確認そのシステムで送受信・保存したデータがどれなのかを、保存期間を通じて客観的に示せるようにしておく

④は表になっていないので落としやすいところです。 パンフレットは①〜③を表に並べたうえで、本文のほうに「以下の一定の要件(改ざん防止の確保、記帳の適正性確保、電子帳簿との相互関連性確保)を満たして送受信・保存を行い、確認できるようにしている場合」と書いています。条文でも独立した号です。

第一号の特定電子計算機処理システムを使用して特定取引情報の授受及び特定電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるようにしておくこと(施行規則5条5項4号。令和9年1月1日施行)

取扱通達8-29は、これを「税務職員から……確認を求められた際に、特定電子計算機処理システムを使用して特定取引情報の授受及び特定電磁的記録の保存を行った対象を確認できる機能や、備え付けている特定電子計算機処理システムのシステム関係書類等を用いるといった方法によって、保存義務者において、特定取引情報の授受及び特定電磁的記録の保存を行ったことを、保存期間を通じて、客観的に確認できるようにすること」としています。

満たす手段はシステムだけではありません。 一問一答(問72)は、①階層やフォルダを分けてどのシステムから送受信したものか見分けられるようにする方法、②保存するデータ内に識別キーを加える方法のほか、「特定電子計算機処理システムの操作説明書やシステムを提供するベンダーのホームページ等において、「特定電子計算機処理システムを使用して特定取引情報の授受及び特定電磁的記録の保存を行うこと」が可能な取引の種類がわかるように示すこと」を挙げています。1つのシステムから1つのデータ形式で受領する場合は、識別キーは要らず、備え付けているシステム構成図等で確認できるとされています。

そのうえで、義務のほうの要件が前提になります。 パンフレットは「デジタルシームレス保存は、電子取引データ保存の要件を満たしていることが前提です」としており、一問一答も「なお、この場合も、電子取引データの保存要件であるディスプレイやプリンタ等の備付け及び検索要件を満たして保存する必要があります」としています(問65)。義務を飛ばして優遇措置だけを取りに行くことはできません。

いま確認すること

実務としては、次の順で見ればよいはずです。

  1. 外からデータで届いているものを全部書き出す。 メール添付のPDF、クラウドサービス、ECサイト、ネットバンキング、クレジットカードの利用明細、複合機のFAX
  2. それを消さずに置いている場所があるか。 ここが無ければ、猶予措置にも乗れません
  3. 事務処理規程を作って備え付ける。 国税庁のサンプルで足ります。費用はかかりません
  4. 基準期間(2年前)の売上高を確認する。 5,000万円以下なら、6番とあわせて検索機能の確保が不要になります。ただし非課税売上を含めて判断します
  5. 5,000万円を超えるなら、索引簿かファイル名の規則を決める。 出力書面の整理で代える道もありますが、紙の整理が続きます
  6. 税務調査でダウンロードの求めに応じられるか。 どの段でも必ず要る要件です
  7. 優遇措置を取りに行くなら、届出書の期限を確認する。 個人事業者が令和8年分から受けるなら令和9年3月15日までです

2番までが済んでいれば、最低限の線は越えています。 逆に、2番が済んでいない状態は、猶予措置でも救われません。

まとめ

  • 電子帳簿保存法の3つの制度のうち、義務は「電子取引データ保存」だけです。帳簿を紙で保存し続けるのは自由です
  • 電子取引はメール添付だけではありません。 ネットバンキング、クレジットカードの利用明細、複合機のFAX、ECサイトの領収書が入ります。明細を保存しても、個別の領収書データは別途必要です
  • 要件は改ざん防止・ディスプレイ等の備付け・検索機能の3つ(自社で開発したプログラムを使っている場合だけ、システム概要書の備付けが加わります)。改ざん防止は事務処理規程で足り、国税庁がサンプルを出しています
  • 検索機能は2段階で外れます。 ダウンロードの求めに応じられることはどの段でも必要で、そのうえで売上高5,000万円以下か書面整理のどちらかを満たすと不要になります
  • この「売上高」は、消費税の課税売上高とは別物です。非課税売上額が含まれるので、免税事業者でも超えることがあります
  • 猶予措置が外すのは要件だけです。 データを残さず出力書面だけを保存する運用は認められません。既に要件どおり保存できている事業者は、原則として対象外です(事業実態の変化があった場合を除きます)
  • 消費税はこの条文の外にあります。電子インボイスを出力した書面を保存すれば仕入税額控除は受けられます
  • 令和9年に、優遇措置が3つ出そろいます。 いずれも法定申告期限までの届出が要ります(優良な電子帳簿で青色申告特別控除65万円を受けている方の75万円は、改めての提出が不要です)。優良な電子帳簿は課税期間の初日から、デジタルシームレス保存は取引ごとという違いがあります
  • 青色申告特別控除は、令和9年分から段そのものが組み替わります。 55万円の段は電子申告が要件に加わって65万円になります。紙で申告している個人事業者は、いまの段に居続けられません

制度そのものは重くありません。重いのは、自社にどのデータが届いているかを洗い出すところです。 ここは業務の棚卸しに近い作業で、経理の担当者だけでは全部は出てきません。

洗い出しから保存の形、規程の整備、優遇措置を取りに行くかどうかの判断まで、実際の取引の流れを拝見したうえでご相談に応じます。

よくある質問

会計ソフトを電子帳簿保存法に対応したものに入れ替えました。これで対応は済みましたか。

会計ソフトは3つの制度のうち「電子帳簿等保存」に関わるもので、そちらは希望者のみの制度です。義務なのは「電子取引データ保存」のほうで、こちらはメールに添付されて届いた請求書のPDF、ネットバンキングの振込データ、ECサイトの領収書といった、外から届くデータをどう保存しているかの話です。会計ソフトを入れ替えても、受け取ったPDFの保存方法が変わっていなければ、義務のほうは手つかずということになります。まず確認するのは、受け取ったデータをどこに、どういう名前で置いているかです。

「猶予措置があるから当面は何もしなくてよい」と聞きました。

正確ではありません。施行規則4条3項の猶予措置が外すのは「保存時に満たすべき要件」であって、データを保存すること自体は外しません。取扱通達7-13は「その出力書面の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合であっても、その出力書面の保存のみをもってその電磁的記録の保存を行っているものとは取り扱われないことに留意する」としています。印刷して捨てる運用は、猶予措置の下でも認められません。データは残したうえで、検索や改ざん防止の準備が整うまで待てる、という措置です。

猶予措置を使うのに、税務署への届出は要りますか。

要りません。国税庁の一問一答(問93)は「この猶予措置の適用を受けるに当たり税務署への事前申請等の手続は必要ありません」としています。ただし、税務調査の際に相当の理由を確認される場合があるとされており、問94は「この猶予措置の適用にあたっては、保存時に満たすべき要件に従って保存をすることができなかったことに関する相当の理由を確認させていただく場合もありますが、仮に税務調査等の際に、税務職員から確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを具体的にご説明いただければ差し支えありません」としています。あわせて、データと出力書面の両方について、税務職員の求めに応じられるようにしておく必要があります。

「基準期間の売上高が5,000万円以下」の売上高は、消費税の課税売上高と同じですか。

違います。一問一答(問51)は「規則第4条第1項は「売上高」と規定していることから営業外収入や雑収入を含んでおらず、結果として、消費税法上の「課税売上高」とはその内容を異にしていますので、ご注意ください」としています。判定の方法は消費税法37条の基準期間における課税売上高の例によるとされており、税抜きで判断し、基準期間が1年でない法人は月数で年換算します。ただし、消費税の課税売上高と違って非課税売上額が含まれます。免税事業者や簡易課税を選んでいる方でも、非課税売上を足すと5,000万円を超えることがあります。

検索機能のために専用のソフトを買う必要がありますか。

ありません。一問一答(問50)は、Excel等の表計算ソフトで取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を入力した一覧表(索引簿)を作る方法と、ファイル名を「20210131_㈱霞商店_110000」のように統一した順序で入力する方法を挙げています。国税庁は索引簿のサンプルも公開しています。加えて、基準期間の売上高が5,000万円以下であれば、税務調査の際にダウンロードの求めに応じられるようにしておくことで、検索機能の確保そのものが不要になります。

電子取引のデータを保存できていないと、消費税の仕入税額控除も受けられなくなりますか。

そうはなりません。電子帳簿保存法7条が保存義務を課しているのは「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者」で、消費税はこの条文の対象ではありません。一問一答(問98)も「消費税に係る保存義務者が行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存については、その保存の有無が税額計算に影響を及ぼすことなどを勘案して、引き続き、その電磁的記録を出力した書面による保存が可能とされています」としています。ただし、これは消費税の話であって、法人税・所得税の側の保存義務がなくなるわけではありません。

重加算税の加重措置の除外を受けるには、期首から準備しておく必要がありますか。

必要ありません。取扱通達8-24は「電磁的記録に係る重加算税の加重措置については、重加算税を賦課する取引ごとに適用を判断するものであるから、その除外措置の適用を判断する際についても、同様に取引(電磁的記録)ごとに判断するものである」としたうえで、「課税期間の開始の日から規則第5条第5項各号…に定める要件を満たす状態である必要はなく」と続けています。期中に導入した場合、導入後に保存したデータが対象になります。これは、課税期間の初日から要件を満たしている必要がある優良な電子帳簿の過少申告加算税の軽減措置とは違うところです。

個人事業者です。青色申告特別控除の75万円を受けるには、いつまでに何をすればよいですか。

控除額の引上げは令和9年分以後の所得税について適用されます。国税庁のパンフレットは「「優良な電子帳簿」又は「デジタルシームレス保存」のいずれかの要件を満たした上で、電子申告する必要があります」としています。届出書は、適用を受けようとする年分の法定申告期限までに提出すれば「あらかじめ」提出したものとして取り扱われます(取扱通達8-5)。なお、同パンフレットは「優良な電子帳簿で青色申告特別控除65万円の適用を受けている場合は、改めて届出書を提出しなくても青色申告特別控除75万円の適用が受けられますよ」としています。

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